便潜血検査は大腸がんのスクリーニング検査として広く普及している検査です。便をスティックで採取して提出するだけの簡単な検査なので健康診断の際、大腸がん検診として実施されています。
通常、食物が便となって排泄される課程で便に血が混じることはありません。もしこの検査で陽性と判定された場合には「大腸がんの可能性がある」ということになります。
したがってもし健康診断などで便潜血陽性と言われてしまったら大腸の精密検査が必要となります。
もし排便時に見てわかる量の出血があれば、便器の中を見るだけで出血があるとわかります。しかし出血がごくごく少量の場合は目で見てもわかりません。そこで採取した便に試薬を混ぜ、その変化で血液が混じっているかどうか確認する検査が便潜血検査です。主に大腸で出血しているのかどうかを確認する検査です。
しかしその検査の意義をしっかりと理解されていない方も多く、便潜血検査が陽性であっても精密検査を受けずそのまま放置してしまう方もおられます。万が一、本当に大腸がんができていたとしても初期には自覚症状がないため「切れ痔で肛門が切れてしまったから」「昔から痔があるから」とご自分に都合の良い解釈をしてしまい精密検査の機会を逃してしまう方もいらっしゃいます。
便潜血検査で陽性と言われたときに一番やってはいけないことは消化器内科を受診せずに放置してしまうことです。
では便潜血陽性と診断された場合、どのくらいの確率で本当に病気が見つかるのでしょうか?
実はこの検査はあくまでスクリーニング検査なので検査の精度はそれほど高くありません。便潜血陽性と言われた方から大腸ポリープ(良性腫瘍)が見つかる確率が50%程度、大腸がんが見つかる確率が2~3%程度と言われています。
ただ大腸ポリープのうちもっとも頻度の高い腺腫と呼ばれるポリープは一定の確率でがん化することがわかっています(5mm以下では1.8%、5〜10mmで約3〜9%、10〜20mmで約25〜33%、20mm以上で約60〜70%)。したがって便潜血陽性と言われたらやはり大腸の精密検査が必要となります。
大腸の精密検査としては大腸カメラ以外に大腸CT検査、大腸カプセル内視鏡、大腸バリウム検査などがあります。それぞれの検査でメリットとデメリットがありますが、大腸を直接目で見て確認するという精度の点では大腸カメラが最も優れています。また大腸カメラ以外の検査では怪しい病変があった際に生検という細胞を少量採取する検査を行ったり、大腸ポリープを切除したりといった検査・治療を行うことはできません。
80代、90代の高齢の方の場合には腸管の壁が薄く、大腸カメラで大腸の壁を傷つけてしまったり穴が開いてしまったりという合併症のリスクが高くなるため大腸カメラではなくあえて大腸CT検査を選択させていただく場合もあります。ただ基本的には検査の精度と生検や大腸ポリープ切除が可能という観点から便潜血陽性の際の大腸の精密検査としては大腸カメラが推奨されます。
大腸内視鏡検査のメリットとしては小さな病変を見逃さないこと、生検や大腸ポリープ切除ができること、病変の形だけでなく色や模様などを観察できることがあります。
一方、デメリットとしては絶食して下剤を飲んだりと準備が面倒、検査に時間がかかることがある、カメラを挿入する際に苦痛が生じることがある、稀に大腸の壁に傷が付いたり穴が開いたりすることがある、などあげられます。
まず検査に必要な時間は朝からお昼の2~3時頃まで長時間に及びます。起床後、前処置として腸管洗浄液と呼ばれる2Lほどの液体の下剤を数時間かけて飲みます。あまり美味しくないためやや飲みづらく感じるかもしれません。洗浄液を内服しながら自宅トイレに7~10回程度行って便をすべて出し切る形となります。
検査に伴う苦痛や大腸に傷をつけたりといったデメリットについては検査を行う医師の能力や鎮静剤の使用である程度は克服可能です。当院では検査に不安のある方は過去の大腸カメラで苦痛が強かった方は鎮静剤を使用して眠ったような状態で検査を受けていただくことも可能です。
近年、「内視鏡が専門ではない医師」「消化管が専門ではない医師」が大腸カメラを行っているケースがあり、検査の苦痛が強かったり腸に傷が付いたりといったトラブルの原因ともなっています。当院の医師は消化器病専門医・消化器内視鏡専門医・胃腸科専門医であり特に胃や腸といった消化管を専門としております。大腸カメラについては1万件以上※の経験数があります。
※2026年4月現在。これまで勤務してきた施設での実績を合計したものです。
大腸カメラは大腸カメラの症例数が多く、内視鏡専門医かつ特に消化管を専門とする医師の検査を受けることが推奨されます。
大腸ポリープ、大腸がんは決して稀ではない疾患です。便潜血陽性となってしまった方は必ず消化器内科を受診しましょう。
特に、50歳以上、大腸がん・大腸ポリープの家族歴、高カロリー摂取・肥満、過量のアルコール摂取、喫煙などはは大腸がんの危険因子ですので心当たりがある方は必ず大腸カメラを受けてください。